全国10県、11ヶ所の 月齢及び地域の木材特性への 影響確認試験結果発表会開催会
全国10県、11ヶ所の月齢及び地域の木材特性への
影響確認試験結果発表会開催(10月7日(金))
デジタルハリウッド大学との共同主催
この度、木とともに暮らす人の協議会「木暮人倶楽部」(東京都文京区、理事長吉田就彦 以下、木暮人倶楽部という。)では、
京都大学及び全国の林業家等と共 同で行った「月齢及び地域の木材特性への影響確認試験」(以下、本試験という。)の実験を終え、
その結果、月齢伐採及び葉枯らし乾燥が木材のデンプンの含 有量に顕著な影響を与えることが判明いたしましたので、
本試験結果の発表会(以下、本発表会という。)をデジタルハリウッド大学と共同で開催いたします。
本試験は、2010年の10月から11月の間に、全国10県、11ヶ 所の林業家等の協力で行われたもので、
月の満ち欠けに応じて伐採(以下、月齢伐採という。)した樹木に対して、伐採後枝葉を残した状態で
そのまま山に放置 して乾燥させる葉枯らし乾燥(以下、葉枯らし乾燥という。)を行った場合に、
樹木のデンプン含有量がいかに変化するのか、もしくはしないのかを確認するこ とを目的として行われました。
その結果、下弦や新月期に伐採した樹木で葉枯らし乾燥によるデンプンの消失が顕著であることがわかり、
木材の伐採時期や乾燥方法が木材のデンプン含有量に大きく影響を与えることが判明いたしました。
このことで、木材の伐採時期や乾燥方法の工夫により、
虫害やカビ発生のリスクを低減させる可能性が出てきたものと考えられ、
木材の商用利用拡大のために必須である良質な木材の生産に本試験結果が寄与するものと考えております。
その詳細を報告する本発表会を、下記の要領で、開催いたしますのでご案内いたします。
記
■本試験結果発表会概要
主催;木とともに暮らす人の協議会「木暮人倶楽部」
共催;デジタルハリウッド大学大学院吉田就彦研究室森林・林業研究部会
分析協力;三浦林商(三重県)、株式会社みどりの素材研究所(三重県)
協力;
田口木材株式会社(秋田県)、
株式会社むつみワールド(秋田県)、
ひと・環境設計(宮城県)、
有限会社小田原緑地(神奈川県)、
有限会社アシスト(山梨県)、
天竜T.S.ドライシステム協同組合(静岡県)、
南木曽木材産業株式会社(長野県)、
荒山林業(長野県)、
河北の木で家を建てる会(石川県)、
三重県中勢森林組合(三重県)、
三浦林商(三重県)、
株式会社みどりの素材研究所(三重県)、
菅野建設株式会社(愛媛県)、
NPO法人矢部川流域プロジェクト(福岡県)、
株式会社ヒットコンテンツ研究所
日時;10月7日(金)、16時~17時30分
場所;デジタルハリウッド大学大学院秋葉原セカンドキャンパスROOM6
【住所】〒101-0021 東京都千代田区外神田3-1-16 ダイドーリミテッドビル6階
【Tel】 0120-019-236
【E-mail】 daigakuin@dhw.ac.jp
【アクセス方法】
・JR「秋葉原駅」電気街口徒歩3分
・日比谷線「秋葉原駅」徒歩7分
・銀座線 「末広町駅」徒歩5分
・つくばエクスプレス「秋葉原駅」徒歩5分
■本試験概要
研究主体木とともに暮らす人の協議会「木暮人倶楽部」
共同研究;京都大学
分析協力;
三浦林商(三重県)、
株式会社みどりの素材研究所(三重県)
協力;
田口木材株式会社(秋田県)、
株式会社むつみワールド(秋田県)、
ひと・環境設計(宮城県)、
菅原正徳(宮城県本吉郡南三陸町)、
有限会社小田原緑地 (神奈川県)、
有限会社アシスト(山梨県)、
天竜T.S.ドライシステム協同組合(静岡県)、
南木曽木材産業株式会社(長野県)、
荒山林業(長野県)、
河北の木で家を建てる会(石川県)、
三重県中勢森林組合(三重県)、
三浦林商(三重県)、
株式会社みどりの素材研究所(三重県)、
菅野建設株式会社(愛媛 県)、
愛媛県八幡浜地方局産業経済部森林林業課、
大洲市農林水産課、
大洲市森林組合、
愛媛県建築士会大洲支部、
NPO法人矢部川流域プロジェクト(福岡県)、
諸富林産興業(福岡県)
目的;伐採時期(新月、満月、上弦、下弦などの月齢)の違い、
ならびに地域の違い(秋田~福岡)が、
木材のデンプン含有量にどのような影響を及ぼすかについての調査を行い、
伐採時期、乾燥方法の最適化における参考資料とすること。
方法;
全国各地の林業家(秋田県、宮城県、神奈川県、山梨県、静岡県、長野県、石川県、
三重県、愛媛県、福岡県)の全国10県、11ヶ所のスギなどを対象に、
月齢伐採及び葉枯らし乾燥を行い、それらのデンプン含有量の比較調査を行った。
■本試験方法詳細
<試験ケース>
・ 伐採時期: 秋季(10月~11月)における月齢4期
(下弦、新月直前、上弦、満月直前)
・ 対 象 木: スギ等、樹齢20年程度以上(胸高直径10cm程度以上)を3本
・ 観測回数: 伐採直後及び3ヶ月後、6ヶ月後の3回
・ サンプリング方法:伐採直後に木口を厚さ2cm程度の輪切りにし、
樹皮を含めて4cm×4cm×厚さ2cmのブロックに加工しビニールテープを巻き
「マジックインク」ペンで木材番号を記入後早急に冷凍
(3ヶ月後、6ヶ月後は木口から15cmを切り落としたところで厚さ2cm程度の輪切りをする、
以降の手順は上と同じ)
<試験項目>
サンプリングしたブロックによりデンプン写真判定を測定する。
・ デンプン写真判定: 角ブロックからまさ目面切片(厚さ20~30μm)
標本をスライディングミクロトームにより作製、
ヨウ素カリウム溶液での着色状況を光学顕微鏡により観察、記録撮影する。
<試験ケースおよび試料数>
伐採日は下表のとおり、下弦、新月直前(1日前)、上弦、満月直前(1日前)の4日で合計12試料。
ケース
No. |
季節 | 月齢 | 伐採日 | サンプリング数 | 備 考 |
※ | 下弦 (21:46) | 10/30 | 3試料 | 固体番号1-3 | |
※ | 新月(11/6 13:52)
直前 |
11/5 | 3試料 | 固体番号4-6 | |
※ | 上弦 (1:38) | 11/14 | 3試料 | 固体番号7-9 | |
※ | 満月(11/22 12:27)
直前 |
11/21 | 3試料 | 固体番号
10-12 |
|
合 計 | 12試料 |
- ※ ケース番号は、「○△-□-●」として以下のように設定。
- ○:地域番号、秋田はA、宮城はM、神奈川はK、山梨はY、静岡はS、
長野はN、三重はm、石川はI、愛媛はE、福岡はF とする。 - △:月齢番号、下弦はK、新月はS、上弦はJ、満月はMとする。
- □:葉枯らし期間:伐採直後はイ、葉枯らし3ヶ月後はロ、葉枯らし6ヶ月後はハとする。
- :固体番号:試験本数12本を切った順番に1, 2, 3~12 と連番とする。
- (例) AK-イ-1 (秋田で下弦[10/30]に伐採した伐採直後の固体場号1番)
- MS-ロ-4(宮城で新月直前[11/5]に伐採した葉枯らし3ヶ月の固体番号4番)
- KJ-ハ-9(神奈川で上弦[11/14]に伐採した葉枯らし6ヶ月後の固体番号9番)
- YM-ハ-10(山梨で満月直前[11/21]に伐採した葉枯らし6ヶ月後の固体番号10番)
- ■本試験結果要旨
- 2010年10月30日(下弦)、11月5日(新月直前)、11月14日(上弦)、
- 11月21日(満月直前)に、全国11ヶ所で、スギのほか、ヒノキ、ウリハダカエデも
- 伐採した。伐採直後に辺材部(白太)を採取し、固定液に漬けた。
- 伐採された木は3ヶ月間、あるいは6ヶ月間、山中で葉枯らし乾燥をさせ、
- 再び辺材部を採取して固定液に漬けた。
- これらの試片よりまさ目面切片を作製し、
- ヨウ素・ヨウ化カリウム水溶液を滴下してデンプンを検出した。
- スギの結果は以下のとおりである。
- 伐採直後の試片では、デンプンは、地域により、
- また個々の木により異なっていたが、
- ほとんどの試片でその存在が確認された。
- デンプン量は、満月>上弦>新 月>下弦であったが、
- これは月齢による差というよりは、
- 冬に向かって貯蔵デンプンを増やしていくことによるものと思われる。
- 3ヶ月間、あるいは6ヶ月間葉枯らし乾燥を行うと、
- 明らかに期間の長さに応じてデンプン量は減少した。
- 6ヶ月後のデンプンは、下弦に伐採された木ではほとんどが消失し、
- 新月直前に伐採された木ではかなりの減少を見た。
- 一方、上弦、ならびに満月時に伐採された木 では、
- デンプンのほとんどが消失した個体がある一方で、
- まだ大量に保持している個体も存在した。
- これらの時期に伐採、葉枯らし乾燥された木は、
- デンプンの 含量から見るとばらつきが大きいと言える。
- 個体数は少ないが、ヒノキ、ウリハダカエデでもほぼ同様の結果が得られた。
- 木の中に含まれるデンプンだけで木の性質を議論できるわけではないが、
- 一般にデンプンや可溶性の糖類が存在すれば、
- 虫害やカビの発生を引き起こしやすくなるものと思われる。
- 今回の本試験結果は、下弦や新月期に伐採して長く葉枯らし乾燥をすれば、
- 伐採時に含まれていたデンプンがうまく消費されて、消失、
- あるいはそれに近い状態を作り出すことができることを示している。
- ■月齢伐採について
- 月齢伐採とは、月の満ち欠けに合わせて木を伐採する方法のことで、
- 月の満ち欠けを意識した伐採法は、我が国で1600年 代に編纂されたと言われている
- 建築書「愚子見記」内の記述をはじめヨーロッパや南米など
- 世界各地でも様々な文献・伝承の中で紹介されている。
- その中で、新月時(下弦の月から新月に至る月齢時)に伐採した木が、かび難く、
- 虫に食われにくいと伝えられていることから、その科学的な根拠として、
- 新月時に伐採した 木材は他の時期に伐採したものに比してデンプン含量に
- 大きな差があるのではないかとの仮説が立ち、
- 本試験は、それを検証する一環として行ったものである。